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2022年に年金手帳の発行は廃止|年金に関する手続きはどう変化するのか?

栗田 謙人
更新日:2024/03/31

年金手帳は2022年(令和4年)3月末をもって廃止されました。同年4月から新しく公的年金に加入する方には、年金手帳に代わって基礎年金番号通知書が発行されています。

「年金手帳はなぜ廃止されたのか」「今、手元にある年金手帳はどうしたらよいのか」と疑問に感じたり悩んだりしている方は多いでしょう。この記事では、年金手帳が廃止になった理由・新しくなった年金に関する手続きの仕方・手元に残った年金手帳を利用できるシーンなどについて解説します。

目次
  • 年金手帳が廃止になった理由
    • 年金手帳とは
    • 年金手帳が廃止になった理由
    • 今後は「基礎年金番号通知書」が交付
  • 年金手帳が廃止になって変化する事
    • 2022年4月以降、年金手帳の再発行は行われない
    • 年金に関する手続きはマイナンバーでも可能
  • 基礎年金番号を利用するシーンは
    • 就職や転職をしたときの厚生年金保険・共済組合の被保険者資格の取得
    • 住所や名前の変更
    • ねんきんネットの登録手続き
    • 障害・遺族・老齢などの年金受給・相談
    • 会社を辞めた際の国民年金の被保険者資格の取得
  • 基礎年金番号で年金に関するすべての手続きが簡単にできる

年金手帳が廃止になった理由

年金手帳は、20歳以上で国民年金・厚生年金・船員保険など公的年金の被保険者である身分を証明できるものとして発行されていた紙製の手帳でした。この項では、年金手帳に記載されていた項目・廃止になった理由について解説します。

年金手帳とは

年金手帳は1950~1960年代から導入され、広く利用されていました。本格的な導入・利用が始まったのは1974年(昭和49年)10月です。理由は、国民年金・厚生年金保険の被保険者証が共通化して、被保険者の年金情報を管理しやすくする必要が生じたためでした。また、年金手帳は発行された時期によって、表紙の色や年金番号の記載方法などが異なります(※1)。

手帳の色 発行時期 年金番号の記載方法
茶色 1960年10月~1974年9月 記号・番号のみ
オレンジ色 1974年10月~1996年12月 ・厚生年金・国民年金・船員保険の記号番号(1974年10月~1986年3月)
・船員以外の厚生年金・国民年金・船員の厚生年金保険(1986年4月~1996年12月)
水色 1997年1月~2022年3月 基礎年金番号

(※1)参考:日本年金機構「年金手帳の変遷等に係る資料」

1997年(平成9年)、基礎年金番号の導入により年金手帳の色がオレンジから水色に変わりました。基礎年金番号は10桁の数字で、公的年金被保険者1人に1つ交付されます。生涯同じ番号を使い続けるので、転職などで加入する年金の種類が変わっても年金の記号番号は変わりません。基礎年金番号の誕生は、加入者が複数の年金番号を管理しなくてよい・年金に関する手続きがスムーズになるなど、多くのメリットをもたらしました。

年金手帳が廃止になった理由

年金手帳が廃止になった理由はいくつかあります。中でも、よく挙げられているのは、以下の3点です。

  • マイナンバー制度の導入
  • 情報通信技術(ICT)の導入
  • 基礎年金番号を証明する書類だけで年金関係の手続きが可能になった

システムで個人の年金年金情報を管理できるようになったので、紙媒体の手帳が不要になったのが年金手帳廃止の大きな理由です。さらに、マイナンバーカードと基礎年金番号を連携すれば、マイナンバーカードだけで年金関係の届け出・申請・問い合わせなどの行政手続きが可能になります。マイナンバーと基礎年金番号の連携については、2024年現在、段階的に行われているところです。

今後は「基礎年金番号通知書」が交付

2022年(令和4年)4月以降、初めて公的年金に加入する方には、年金手帳に代わって基礎年金番号通知書が発行されています。カード型で、記載されている項目は以下の4つです(※2)。

(※2)参考:日本年金機構「令和4年4月から年金手帳に代わり基礎年金番号通知書を発行します」

  • 基礎年金番号
  • 氏名
  • 生年月日
  • 交付年月日

基礎年金番号通知書が手元に届いたら、紛失しないよう大切に保管しましょう。すでに年金手帳を持っている方には発行されませんので、年金に関する手続きが必要なときは、引き続き年金手帳を使ってください。

年金手帳が廃止になって変化する事

年金手帳から基礎年金番号通知書に変更され、これからは基礎年金番号やマイナンバーだけで年金関係の手続きができるようになりました。今後は、氏名や住所の変更を年金機構の事務所に届けたり、就職や転職の際、事業所に年金手帳を提出したりする必要もありません。ほかにも年金手帳廃止による手続きの変更があるので、解説します。

2022年4月以降、年金手帳の再発行は行われない

年金手帳は完全に廃止されたので、2022年4月以降はどのような理由でも年金手帳は発行されません。しかし、すでに年金手帳を持っている方に基礎年金番号通知書は発行されないので、引き続き年金手帳が必要です。大切に保管しておきましょう。

もし、年金手帳を紛失した場合は、所定の手続きをして基礎年金番号通知書の発行を受けてください(※3)。今後、年金に関する手続きはマイナンバーか基礎年金番号だけでできますが、水色以外の年金手帳(茶色やオレンジ色)には基礎年金番号が記載されていないケースがあります。自分の基礎年金番号が分からない場合は、年金事務所に問い合わせましょう。基礎年金番号の利用方法については後述します。

(※3)参考:日本年金機構「年金手帳や基礎年金番号通知書をなくしたのですが、再発行はできますか。」

年金に関する手続きはマイナンバーでも可能

年金関連の手続きは、基礎年金番号とマイナンバーが紐付けされていれば、マイナンバーだけでも可能です。基礎年金番号とマイナンバーの紐付けは、所轄の年金事務所に「個人番号等登録届」を郵送か窓口に提出するだけでできます。登録届の用紙は日本年金機構のサイトからダウンロードするのも可能です(※4)。

(※4)参考:日本年金機構「マイナンバーを届け出るには、どのような手続きが必要ですか。」

実際にマイナンバーで手続きをするときは、本人確認も行われます。本人確認には身元確認と番号確認ができる書類が必要になるので、個人番号カードがない場合は、身元確認ができる運転免許証やパスポートなどの書類と、番号確認ができる通知カードやマイナンバー付き住民票等の書類を持参してください。

基礎年金番号を利用するシーンは

年金手帳が廃止され、今後は、基礎年金番号で年金関係の手続きができます。基礎年金番号が必要になるシーンを具体的に解説するので、参考にしてください。

就職や転職をしたときの厚生年金保険・共済組合の被保険者資格の取得

基礎年金番号が必要なシーンの1つは、就職して厚生年金保険に加入した・転職して加入する年金の種類が変わった・退職して国民年金に加入したときです。職場の担当者や年金事務所で求められたら、基礎年金番号通知書・基礎年金が記載されている年金手帳(水色の年金手帳)・マイナンバーカードのいずれかを提出しましょう。

就職・転職・退職で年金の手続きをする場合、最も便利なのはマイナンバーカードです。マイナンバーカードなら年金だけでなく、健康保険や雇用保険などの手続きもできます。

住所や名前の変更

結婚で住所や氏名が変わった場合、マイナンバーと基礎年金番号が紐付けされていれば特別な手続きは不要です。しかし、結婚して被扶養者になる場合は、これから扶養する配偶者の基礎年金番号を記入した「健康保険 被扶養者(異動)届」と「国民年金 第3号被保険者関係届」を企業の担当者に提出する必要があります。

引っ越しをして住所が変わった場合は、原則手続き不要です。しかし、以下に該当する方は手続きが必要なので、所轄の年金事務所に基礎年金番号など必要事項を記入した「年金受給権者 住所変更届」を提出してください(※5)。

  • マイナンバーと基礎年金番号が紐付けされていない方
  • 住民票の住所と違う場所に住んでいる方
  • 被成年後見人の方

(※5)参考:日本年金機構「引っ越しをしました。住所変更の手続きは必要ですか。」

ねんきんネットの登録手続き

「ねんきんネット」は、PCやスマートフォンからいつでも自分の年金情報を確認できるサービスです(※6)。基礎年金番号を持っていれば利用できます。サイトにアクセスし、マイナポータルとの連携・ユーザIDを取得のいずれかの方法で利用登録しましょう。いずれの方法で登録する場合も、基礎年金番号が必要です。

(※6)参考:日本年金機構「ねんきんネット」

「ねんきんネット」には、納付し忘れた国民年金料をネットバンキングなどから納付する・
源泉徴収票や社会保険料控除証明書などの再交付を受ける・持ち主が分からない年金記録の検索など、さまざまなサービスが用意されています。登録しておくと非常に便利です。

障害・遺族・老齢などの年金受給・相談

基礎年金番号は、障害年金・遺族年金・老齢年金などの受給や相談の際にも必要です。実際に年金受給の請求をするときには、基礎年金番号以外に以下のような書類の提出を求められます(※7)。

年金の種類 必要な書類
障害年金 医師の診断書・住民票など本人の生年月日が分かる書類・受診状況等証明書・病歴・就労状況等申立書など
遺族年金 戸籍謄本・世帯全員の住民票の写し・死亡者の住民票の除票・請求者の収入が確認できる書類・市区町村長に提出した死亡診断書など
老齢年金 受給開始年齢に到達する3カ月前に送付された「年金請求書」

※7)参考:日本年金機構「年金の受給に関する届出・手続き」

障害年金と遺族年金は、必要な書類が多いです。また、国民年金・厚生年金のどちらに加入していたかによっても手続きの仕方が異なるので、事前に年金事務所や市区町村の窓口などでよく相談しましょう。

会社を辞めた際の国民年金の被保険者資格の取得

基礎年金番号は会社を退職したとき、厚生年金から国民年金に切り替える手続きにも使います。退職したら速やかに、市区町村の担当窓口まで手続きに行ってください。また、手続きには基礎年金番号以外に以下の書類が必要です。

  • 本人確認ができる書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
  • 退職年月日を証明できる書類(社会保険厚生年金資格喪失証明書・離職票など)

退職してしばらくしてから再就職し、また厚生年金加入者になった場合は、新しい就職先の担当者に基礎年金番号を提示してください。

基礎年金番号で年金に関するすべての手続きが簡単にできる

年金手帳に代わって基礎年金番号が発行されるようになり、年金に関する手続きが非常に簡単になりました。個人の年金記録はすべてシステム管理されているので、事務処理がスピーディになったのもメリットです。

年金手帳は廃止されましたが、すでに発行されている年金手帳は今後も使用します。廃棄せず大切に保管しておいてください。

株式会社WARC HRtech CSマネージャー 栗田 謙人

2021年にSYNCAのカスタマーサクセスとしてWARCにジョイン。コーポレート領域に特化し、求職者の転職支援から企業の採用支援の双方に従事し、BizDevとしても機能の企画立案などに携わる。