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住民税とは?仕組みや納税方法、計算方法についても解説

栗田 謙人
更新日:2024/03/25

個人に課せられる税金の一つが「住民税」です。住民税は、所得の受け取り方によって納税方法や税額の算出方法が異なります。そのため、住民税について「いくら納税するのか」「どのように納税するべきなのか」と、疑問を感じている人が多いのではないでしょうか。

そこで、本記事では住民税の仕組みや納税方法などを解説します。住民税の税額計算方法などもまとめているので、住民税について理解を深めたい方は参考にしてください。

目次
  • 住民税とは
    • 個人住民税は「所得割」と「均等割」に分かれる
    • 働き方によって異なる住民税の徴収方法
    • 所得税との違い
  • 住民税の納税義務者
    • 所得割が免除されるケース
    • 均等割・所得割の両方が免除されるケース
  • 住民税の計算方法
    • ①総所得金額の計算方法
    • ②住民税における所得控除
    • ③課税所得の計算方法
    • ④所得割の計算方法
    • ⑤税額控除の計算方法
    • ⑥均等割の加算・計算方法
  • 住民税の負担を抑えるには
    • 給与所得者の場合
      • 1.iDeCoに入る
      • 2.親族を扶養に入れる
    • 3.医療費控除を受ける
      • 4.生命保険控除を受ける
      • 5.ふるさと納税の活用
    • 個人事業主の場合
      • 1.青色申告特別控除
      • 2.必要経費の見直し
      • 3.少額減価償却資産
  • 住民税の納税方法
  • 住民税の納付時期
    • 納税期日を過ぎてしまったらどうなる?
    • 退職後も住民税の支払いは発生する
  • 住民税を理解して、税金の知識をつけよう
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住民税とは

住民税とは、地方税の一種であり都道府県が課税する道府県民税と、市区町村が課税する市町村税の総称です。各地域で提供されている、教育・福祉・救急・ゴミ処理など、公共サービスを維持するためにあります。それぞれの地域に住んでいる住民で協力して維持費を賄おうという考えです。なお、東京都は都民税になります。

住民税は納税者によって2つに分類されます。個人が負担する個人住民税と、会社など法人が負担する法人住民税の2種類です。なお、各地域に住んでいる・住所がある住民が負担する税は「個人住民税」に値します。

参考:総務省「個人住民税」

個人住民税は「所得割」と「均等割」に分かれる

一般的に、個人住民税には「所得割」と「均等割」の2パターンがあります。前年の所得金額に応じて納税額が決まる「所得割」、一定金額で課税される「均等割」です。これら2つを掛け合わせたものが個人住民税になります。

所得割
特徴 前年度の所得金額に一定の税率を乗じて課税されるもの
標準税率 ・道府県民税:4%
・市町村民税:6%
指定都市税率 ・道府県民税:2%
・市町村民税:8%
均等割
特徴 非課税対象者を除くすべての人に定額で課税される住民税
都道府県民税 1,500円
市町村民税 3,500円

所得割は、内訳は異なるものの、税率自体は10%で統一されています。均等割は、事務所や家を保有していても、該当地域に住所がない場合は所得割は課税対象外です。しかし、均等割は課税対象になるので、注意しましょう。

参考:総務省「個人住民税」

働き方によって異なる住民税の徴収方法

住民税の徴収方法は、働き方によって異なり「普通徴収」か「特別徴収」のどちらかの方法で納付します。

普通徴収は、個人事業主や無職の人を対象にした徴収方法です。その年に納めるべき税額を年4回、または一括で納付します。納付月は、6月・8月・10月・翌年1月で、住所がある自治体から届いた納付書、または自治体指定の納付サイトを利用して納付可能です。普通徴収は、1回あたりの納付額が多いことや自分で納付をしなくてはいけないというデメリットがあります。納付期日を過ぎてしまうと延滞金が発生するので、注意しましょう。

特別徴収は、会社勤めの人に適用される徴収方法です。勤め先企業が特別徴収義務者になっているので、毎月の給与から住民税を天引きして納められます。そのため、自分で納付する必要はありません。普通徴収に比べると、1回の納付額が少ないのも特徴です。

仮に退職しても、次の就業先が決まっている場合は、特別徴収を受けられます。ただし、退職後個人事業主になる場合や就職先が決まっていない場合は、普通徴収に変更になるので注意しましょう。

所得税との違い

所得税は、国の税金であり、納付先は国になります。一方、住民税は地方税です。そのため、所属する地域に納付します。所得税も住民税も、共に所得に応じて課税されますが、納付先が違うので注意しましょう。

また、所得税と住民税では、税額の計算方法も異なります。所得税は、給与から所得控除65万円と基礎控除38万円の合計103万円を差し引いた額に税率を掛けて納付額を決めるのが一般的です。一方、住民税は所得控除65万円と基礎控除33万円の合計98万円を差し引いて計算をします。そのため、同じ所得に応じた税金でも、税額が異なるので注意しましょう。

参考:総務省「個人住民税」

住民税の納税義務者

住民税の課税対象者は、対象年の1月1日時点で市区町村に住所・事務所・事業所・家屋敷のある20歳以上の個人です。前述したとおり、住民税には所得割と均等割があり、1月1日時点の状況によって納税額が異なります。

たとえば、市区町村に住所がある場合、所得割と均等割の合計金額が納める税額です。しかし、市区町村に住所がない場合は均等割で納税額が決まります。均等割りは、状況によっては2か所以上の市区町村に収める必要も発生するので、注意しましょう。

所得割が免除されるケース

以下の条件に該当する場合は、所得割が非課税になります。

  • 単独者の場合、前年中の総所得金額などが45万円以下
  • 同一生計の配偶者や扶養親族がいる場合定められた額以下

   ※東京23区の場合:35万×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の人数)+42万円

参考:総務省「個人住民税」

均等割・所得割の両方が免除されるケース

以下の条件に該当する場合は、均等割と所得割どちらも非課税になります。

  • 生活保護法の生活扶助を受けている
  • 未成年者、寡婦、ひとり親、障がい者のいずれかで前年の合計所得が135万円以下である
  • 前年の合計所得が区市町村の条例で定められた額以下である

なお東京23区の場合、単身者は45万円以下・扶養家族がいる人は、以下の計算式で計算します。

  • 35万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の人数)+31万円

参考:横浜市 均等割・所得割の納税義務者 非課税となる人

住民税の計算方法

次は、住民税の具体的な計算方法について解説します。住民税は前年の所得によって税額が確定するのが基本です。税額は、毎年変化する可能性があります。計算方法を理解し、住民税に対する知識を深めましょう。

①総所得金額の計算方法

住民税は、前年の総所得をもとに計算し納税額を算出します。そのため、最初に総所得金額の計算が必要です。なお、総所得額とは1月1日〜12月31日までの収入から、必要経費や給与所得控除などの控除額を差し引いた金額をいいます。

総所得の金額は、以下の計算式で算出可能です。

  • 総所得額=合計所得の金額-必要経費(-損失の繰越控除)

総所得額には、給与所得・事業所得・利子所得・不動産所得・配当所得などのすべての所得が対象になります。

なお、給与所得は給与所得控除額を算出する必要があるので、以下の表を参考に算出しましょう。

給与などの収入金額 給与所得控除
162万5,000円以下 55万円
162万5,000円超180万円以下 収入金額×40%-10万円
180万円超360万円以下 収入金額×30%+8万円
360万円超660万円以下 収入金額×20%+44万円
660万円超850万円以下 収入金額×10%+110万円
850万円超 195万円(上限)

給与所得者は、会社から交付された源泉徴収票、確定申告をした人は前年度の確定申告書の所得を見れば、合計所得の確認ができます。

②住民税における所得控除

住民税の計算では、所得税のように一定の控除が認められています。以下が控除可能な項目です。

  • 雑損控除
  • 医療費控除
  • 社会保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 障害者控除
  • 寡婦控除
  • ひとり親控除
  • 勤労学生控除
  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • 扶養控除
  • 基礎控除

③課税所得の計算方法

次に、課税所得の算出をします。計算には、以下の計算式を用いてください。

  • 課税所得額=総所得金額-所得控除額の合計

所得控除とは②で紹介した控除対象の項目です。

④所得割の計算方法

所得割の計算は、以下の計算式で算出します。

  • 所得割の課税額=課税所得額×税額(10%)-税額控除額

税額控除とは、計算した納税額から差し引くことができる金額です。住民税の場合、以下の項目が税額控除の対象になります。

  • 配当控除
  • 住宅借入金等特別税額控除
  • 寄附金税額控除
  • 外国税額控除
  • 配当割額・株式等譲渡所得割額の控除

⑤税額控除の計算方法

特定の要件を満たしている場合であれば、③で算出した額から一定金額を差し引くことができます。これを「税額控除」といい、④で紹介した通り、住宅ローン控除や配当控除、調整控除・外国税額控除・寄附金税額控除などが対象です。

④で紹介した式のとおり、税額個所の合計額を所得割から差し引けば、所得割の最終的な納付額が決まります。

⑥均等割の加算・計算方法

均等割は、市区町村民税と都道府県民税を合わせて5,000円が一般的です。この均等割額を、税額控除後の所得割額に加算すれば、住民税の最終的な金額を算出できます。

  • 住民税の金額=税額控除後の所得割額∔均等割額

住民税の負担を抑えるには

個人に納税義務がある住民税ですが、できる限り税額を抑えたいと考える人は多いです。結論、住民税の額を抑えることはできます。以下では、住民税の額を抑えるための方法を給与所得者と個人事業主に分けて解説するので、参考にしてください。

給与所得者の場合

住民税額を抑えるために、以下の方法があります。

  1. iDeCoに入る
  2. 親族を扶養に入れる
  3. 医療費控除を受ける
  4. 生命保険控除を受ける
  5. ふるさと納税の活用

1.iDeCoに入る

iDeCoに加入すれば、年間で払った掛金は所得控除の対象になります。すでに加入している場合は、掛金を増額すればさらに住民税の額を抑えることも可能です。ただし、iDeCoの掛金額変更は年1回のみなので注意しましょう。

2.親族を扶養に入れる

扶養控除とは、同一生計の親族を扶養している場合に受けられる控除です。親族の所得が48万円以下、給与所得者であれば103万円以下であれば扶養に入れることができます。親族を扶養に入れる場合は、確定申告書の「配偶者や親族に関する事項」への記載を忘れないようにしましょう。

3.医療費控除を受ける

1年間の医療費が10万円を超えた場合、医療費控除が適用されます。その結果、住民税を抑えることが可能です。ただし、医療費控除は年末調整では適用できないので、個人で確定申告をする必要があります。

4.生命保険控除を受ける

生命保険や個人年金保険などに加入している場合、年間で払った保険金額に応じて生命保険控除が適用されます。生命保険控除には、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除の3種類があり、これらを合わせて最大7万円の控除が可能です。

5.ふるさと納税の活用

ふるさと納税をすれば、寄付金から2,000円差し引いた額を所得税・住民税から控除できます。ただし、ふるさと納税は納めるはずだった金額を代わりに寄付しているので、実質節税とは言えません。しかし、2,000円の負担で返礼品を受け取れることはメリットにつながるでしょう。

個人事業主の場合

個人事業主の場合は、以下の方法で住民税を抑えられる可能性があります。

  1. 青色申告特別控除
  2. 必要経費の見直し
  3. 少額減価償却資産

1.青色申告特別控除

青色申告をすれば、青色申告控除として最大65万円の控除を受けられます。青色申告をするには、複式簿記による帳簿作成や書類の保存など厳しい要件がありますが、65万円の控除は大きいのでオススメです。

2.必要経費の見直し

個人事業主は、1年間の収入を正確に計算する必要があります。その後、総収入から必要経費を差し引いた金額を出し、確定申告をするのが一般的です。この時、必要経費を適当に計上してしまうと、多額の税負担が発生し税務省から指摘を受ける可能性があります。

必要経費以外に計上していないか、必要経費に計上していないものはないかなど、十分に確認してから計上してください。税金払いすぎのリスクを回避できます。

3.少額減価償却資産

事業用資産のうち、10万円以下のものであれば無条件で必要経費に充てることができます。ただし、10万円を超える資産の場合は、固定資産として減価償却の計算をしなくてはいけないです。

従業員数が500人以下の青色申告をしている個人事業主であれば、30万円までの資産について減価償却資産の特例を利用できます。この制度を利用すれば、年間合計で300万円までは必要経費に計上可能です。その結果、大きな節税ができるでしょう。

住民税の納税方法

会社員の場合、住民税は給与から支払われる「特別徴収」で納付されます。勤め先の企業が従業員の代わりに納税する責任があり、毎月の給与から一定額天引きされる納付方法です。

一方、個人事業主は自分で納付します。これを「普通徴収」といい、6月頃送られてくる「住民税決定通知書」と「納付書」をもとに、期日までに住民税を納付してください。

支払い回数は、一括納付と分割納付の2種類を納付書で選べます。なお、分割納付ができるのは普通徴収のみであり、個人事業主だけなので注意しましょう。

住民税の納付時期

特別徴収が適用されている会社員は、その年の6月から翌年5月まで支給される毎月の給与から天引きされます。

一方、普通徴収が適用される個人事業主やフリーランスは、市区町村から送られてくる納税通知書にしたがって納付します。一括納付の場合は6月、分割納付の場合は6月・8月・10月・1月の4期に分けて納付するのが基本です。一般的な支払方法は、銀行窓口やコンビニ決算ですが、最近ではインターネット決済やバーコード決済にも対応している自治体が増えています。

納税期日を過ぎてしまったらどうなる?

住民税を滞納すると、延滞税というペナルティが課せられるので注意しましょう。納税が遅れると、市区町村から督促状が届きます。督促状が届いたらすぐに市区町村の担当窓口に連絡しましょう。

もし、督促状が届いているにも関わらず滞納が続く場合は、電話での連絡や催促状が届いたり、財産が差し押さえられる可能性があります。万が一、事情があり納税できない場合は、市区町村に相談してみましょう。場合によっては納税が猶予される可能性があります。

決して何も連絡せず滞納するようなことはないようにしましょう。

退職後も住民税の支払いは発生する

これまで説明してきたとおり、住民税は前年度の所得をもとに算出されます。そのため、退職後に退職前年の住民税を自分で納税しなくてはいけません。

算出された住民税は、翌年の6月から次の5月に分けて支払います。納付方法が退職時期によって異なるので、注意してください。

・1月~5月に退職した場合

5月までに支払う住民税が、最終月の給与、もしくは退職金から一括で徴収

・6月~12月

個人で、市区町村から送られてくる納付書で納税。ただし希望者は退職する月から翌年5月までの住民税を、退職付きの給与や退職金から一括して徴収を受けることも可能

住民税を理解して、税金の知識をつけよう

住民税は、市区町村から与えられている個人の納税義務です。特別な事情がない限り、すべての人が納税しなくてはいけません。万が一、滞納すればペナルティで課せられる可能性もあります。

ただし、会社員であれば勤め先が代わりに納税をしてくれるので、滞納のリスクはほぼありません。また、工夫次第で会社員・個人事業主ともに、住民税の納税額を節税できます。住民税の理解を深めれば、メリットにつながるので、この記事を参考に住民税への理解を深めてください。

株式会社WARC HRtech CSマネージャー 栗田 謙人

2021年にSYNCAのカスタマーサクセスとしてWARCにジョイン。コーポレート領域に特化し、求職者の転職支援から企業の採用支援の双方に従事し、BizDevとしても機能の企画立案などに携わる。